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【6】The Far Away of GOLD KNIGHT

 『ドルアーガの塔』の中でも、異端中の異端とされるのが、いわゆる“アトラクション版”。
 1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」に設置された、ライド型光線銃アクションゲームの『ドルアーガの塔』だ。
 花博終了後は、東京のナムコ・ワンダーエッグに移築され、2000年12月31日の閉園まで稼働し続けていたが、現在このゲームを遊ぶことは出来ない。

 このゲームに関しては、2001年から自サイト(『ドルアーガの塔』研究室)にコラムを掲載していた。今回はそれを転載する。

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 The Far Away of GOLD KNIGHT

 ――11年目の“おめでとう”――

 
       

 

 20世紀とともにその幕を閉じた、ナムコの都市型テーマパーク『ワンダーエッグ』。
 ここに、『ギャラクシアン3』と人気を二分するといわれているアトラクション『ドルアーガの塔』があった。
 内容は、テレビゲームの『ドルアーガの塔』とはまったく異なるもので、自動的に進むゴンドラ(ライド)に乗り、“魔法の剣”と呼ばれる光線銃で塔内に巣 食うモンスターを倒して行く、という自走式光線銃ゲームのようなもの。ただ、世界設定が『ドルアーガの塔』のものを使っており、そのぶんファンには思い入 れも強まるアトラクションと言える。
 思えば、このアトラクションとも、もう11年もの付き合いになる。
 ――と書くと、不思議がる方もいるかもしれない。なにせ、ワンダーエッグは1992年2月29日のオープン。実質オープンしていたのは、8年と11カ月ほどしかない。

 だが、このアトラクションには、前歴がある。
 じつは『ドルアーガの塔』は、1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会(通称・花博)」に、『ギャラクシアン3』とともにアトラクションとして設置されていた。
 そして、当時学生だった自分は、本来の目的を隠して親に「花博に行きたい」と直訴し、遠く北海道から一人旅を敢行したのだ。
 ――だが、このときの『ドルアーガの塔』の記憶は、非常に薄い。
 当時は、最先端の技術を駆使した『ギャラクシアン3』のほうに魅力を感じており、ひとりではなかなか遊びづらい『ドルアーガの塔』には、あまり目が向かなかったのである。結局のところ、1回程度しか遊んでいないのではないか……その程度の記憶しかない。もちろん、カイを救出してゴールドナイトなど、夢のまた夢だった。

 そして時計が1992年を過ぎる頃。
 ナムコの都市型テーマパークは想像以上の盛況を見せ、とりわけ当時のマニアにとって伝説的な存在であった『ギャラクシアン3』と『ドルアーガの塔』が遊べるという点から、数多くのマニア連中も全国から呼び寄せることとなった。
 当時、ちょうど上京した時期と重なる自分自身も、通いつめるというほどではないが友達と何度か遊びに行った。
 何度か、と但し書きを付けたのは、熱狂的なマニアのクセに本当に数えるほどしか遊びに行ったことがなかったからだ。
 というのも、もともとワンダーエッグには、開園当初“50カ月の限定開園”という時限装置がついていた。4年ちょっとだが、それでも時間に限りはある ――そう考え、通いつめたリピーターも多かったのだろう。ドラマの舞台になるなど、大成功を遂げたテーマパークからは、いつのまにか時間制限が消えていた のだ。
 だが、閉園が速まるのならまだしも、「終わることがない」ということであれば、嘆く理由はどこにもない。「いつでも遊べる」――そんな安心感が生まれた からか、都心に程近い位置にありながらもワンダーエッグに率先して行く気はなくなってしまった。だって、いつ行ってもワンダーエッグはそこにいてくれるの だから……。

 悪い報せは突然、何の前触れもなくやってくる。
 2度目の変身を経た『ワンダーエッグ3』には、再び開園期限がついた。
 思えば、このときにもっと真剣に受け止めるべきだったのかもしれない。「どうせ、またリミットブレイクするよ」――そう見当をつけた人々は、のちにこの時間制限が本当のものであったことを知り、後悔する。
 閉園の真相は、関係者ではないのでわからない。不況による収益不足、二子玉川の再開発にともなう整理、あるいは単に天寿を全うしただけのこと……さまざまな憶測が乱れ飛んだが、どうあれワンダーエッグがこの世から消えてなくなる、という事実だけは確かだ。
 だが、そうした運命を否定しつつも、心のどこかで信じつつも、忙殺という現実の前に「ゴールドナイトになろう」という考えは、なかなか沸いて出てこなかった。「閉園までに行けばいいさ」――胸中に一度巣喰った怠惰の虫は、危機感をひどく鈍磨させていた。

 2000年12月26日。
 悪い癖だ。子供の頃から、本当の瀬戸際にならないと物事をはじめようとしない。
 この日、ようやくワンダーエッグに行く決心がついた。
 渋谷から東急新玉川線に乗り、揺られること数分。車窓から東急二子玉川駅の遠景が見えた途端、胸の高鳴りが加速した。
 ここに来るのも、もう何年ぶりだろうか。少なくとも、前に来たときは二子玉川「園」駅だったし、ワンダーエッグも「2」だったはずだ。
 過去の記憶をたぐり寄せても、5年は遡らなければならない。しかも、その時『ドルアーガの塔』をプレイした明確な記憶もないため、実質的な間隔は不明だ。
 しかし、それでも『ドルアーガの塔』は、以前と変わらぬ顔で待ちかまえていた。
 『ミラーナの心理迷宮』も『バーチャルビークル』も、すでにない。時代の嗜好とテクノロジーに合わせて進化をつづけてきたワンダーエッグにおいて、数少ない「変わらざるもの」のひとつが『ドルアーガの塔』なのだ。

 挑戦は幾度もつづいた。
 冒険をともにした友人も、音を上げることなくついてきてくれている。
 しかし、それでもドルアーガの守りは堅固なものだった。
 5年ものブランクなど何処吹く風で、途中までは快調に進む。アイテムを獲得し、ドラゴンを難なく退け、そしていざドルアーガとの対決へ――しかし、8本の腕に4本の足を持つ魔王は、無常にも挑戦者の希望を絶望に変えてしまう。
 もちろん、ライドが4人乗りである以上、ふたりだけで遊ばせてくれることは少なく、だいたいが見知らぬ人とトリオ(orカルテット)を結成することとなる。
 若いカップルとともに挑戦するも、敗北。
 子供たちといっしょに果敢にチャレンジしても、ダメ。
 年輩の女性ふたりは、ハナからドルアーガを倒そうという意欲すらなく、話にならない。
 幸運にも友人とふたりきりで挑戦できても、それでもドルアーガは右手に握りしめた魔法の剣をものともしない。
 もはや顔も覚えて(そして覚えられて)しまったアトラクターの方々に、毎度毎度コツを伝授してもらうのも、もはや馬鹿馬鹿しい。出口を出たら入口に直行する――そのくり返しだった。
 不安が胸中に暗雲を呼び寄せる。もしかしたら、結局『ドルアーガの塔』をクリアせぬまま、永久に別れを告げねばならないのか……そんな暗澹たる未来を予想しては、おぞましさに震える。気が滅入っていたのは、気温の低さだけが原因ではないはずだ。

 そんな無限地獄の恐怖に脅えつつ、もう何度目か数えてもいない挑戦。
 アトラクターの説明を振り切り、ライドに乗って魔法の剣を振りかざした。
 それまでとはちがい、この挑戦にはわずかな光明が感じられた。
 後列に乗っている男――やや小太りで人の良さそうな風貌、そして何より背中と手にパックマンを宿らせた、ただならぬ気合いと決意。この人と一緒ならば、あるいは……一縷の望みは、確実にターゲットを撃ち抜いていくその腕前で確信に変わりつつあった。
 曲がり角の先にいるドラゴンすら、その姿が見えたとほぼ同時に左手のターゲットは消え、早々に倒されてしまったのだ。
 そして、2枚の扉の向こうに、脅威が鎮座している。
 我々の挑戦をことごとくはねのけた、魔王・ドルアーガ――。
 その威厳に満ちた形相は、さっきまで勝利を確信していた我々に容赦なく恐怖を植え付ける。
 しかし、しかし……無情にも前進を止めないライドから、魔法の剣に“勇気”をこめ、引き金を引きまくった。
 右手ターゲット撃破、左手ターゲット撃破。ここまでは何度となく実現させてきた。
 そして、最後のまだ見ぬ世界へ向け、ドルアーガの喉元へ向け、魔法の剣を振りかざす――

 「ビッ」

 ビッ?
 消えた――消えた!
 やった!!! やったぁー!!!!!!!!

 目の前に姿を現すカイ……。ついに、1990年の夏に花博で初挑戦して以来、約11年目にして、はじめてクリアを達成することができた。
 「おめでとうございまーす!!!」
 アトラクターに祝福され、ゴールドナイトの証・シールを手渡されたときも、全身の震えは止まらなかった。歓喜の極みが、全身を沸騰させる――。
 夢心地で出口を出てから、何ら面識のないパックマンの男に、頭を下げまくった。彼は笑って必勝法を教えてくれ、そして夕闇に消えていった。

 実際、コツ――ひとつのターゲットに複数の光線を当てると、それぞれ打ち消し合ってしまうので、ひとつのターゲットはひとつの銃でのみ狙う――を聞いてからは、過去の苦悩と恐怖が嘘に思えるほど、あっけなくクリアできた。
 計3回ゴールドナイトに輝き、うち一度はほとんどひとりでドルアーガを倒せてしまった。
 わかってしまえば、なぁんだと思える、他愛もない必勝法。
 しかし、あの光景――想いを込めた魔法の剣が、はじめてドルアーガを打ち破った瞬間。
 11年の歳月をかけてたどり着いた、ゴールドナイトの座。
 そう、ゴールドナイトになったんだ。
 あの一瞬は、あの感動は、そしてゴールドナイトの誇りは……絶対に忘れない。

―――――――――――――――

 今あらためて見てみると、やたら「――」を多用した文がすごく青臭くはあるが、あえて原文にほぼ手を加えず転載した。

 余談だが、ワンダーエッグ閉園後、光線銃を初めとする什器(?)は、抽選でプレゼントしていたらしい。つまり、あの光線銃やら説明のパネルやらの現物を持ってるラッキーな方が、この世のどこかにはいるらしい。そして自分は、アンラッキーなことに抽選には外れてしまった。

 あれから6年以上経過し、当時の情景もだいぶおぼろげになってきた。
 だが、このアトラクション版『ドルアーガの塔』が、完全に影も形もなくなってしまった今。
 つたない記憶ではあるが、まだまだ“ゴールドナイトの誇り”を無くすわけには、いかないのだろう。

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