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【1】ゲームミュージックはナムコから始まった

 世界初のゲームミュージックは、『ラリーX』(ナムコ・1980年)らしい。

 それ以前のゲームからは、効果音の類は鳴らされていたし、またファンファーレ程度の短いフレーズなら、同社の『ギャラクシアン』(1979年)をはじめとして、同時代のゲームにはすでに使われていた。
 しかし、「BGM」としての機能と意図を持ち、ゲーム中に始終流される音楽としては、『ラリーX』が“ゲームミュージック”の始祖と言えるのだ。

 今でこそ、ゲームに音楽があるのは当たり前の話であり、その表現の幅も限りなく自由に近い。
 だが、かつては素朴な音色でゲームを盛り上げるような音楽を作るべく、今では考えられないような試行錯誤があったと聞き及ぶ。
 そして昔の一部マニアは、ゲームセンターの筐体に埋め込まれたスピーカーから流れる素朴な音色に、家庭用ゲーム機でテレビのモノラルスピーカーから流れるフレーズに、心をとらえられることとなる。
 それ以来、「ゲームミュージック」は密かに、しかし根強く支持されていくのだ。


 そもそも、昔はゲームメーカーに「作曲」専門のセクションがあるわけでもなく、プログラマーが作曲を(曲データのプログラミングも含めて)担当することが多かったらしい。
 その中で、ナムコはいち早く作曲のセクションを設け、ゲームミュージックの確立に注力してきた。
 それが前述の『ラリーX』をはじめ、『マッピー』『リブルラブル』『メトロクロス』といった初期の名曲群を手がけた大野木宣幸であったり、音大卒業後ナムコに入社し、『ギャプラス』を皮切りに『ドルアーガの塔』『トイポップ』『ローリングサンダー』『風のクロノア』と長きにわたり第一線で活躍してきた小沢純子であったりするわけだ。
 折しも80年代前半のナムコは、“黄金期”と呼ばれるほどに傑作を輩出した時期でもあった。多くのゲームマニアから熱狂的な支持を受け、それに合わせて音楽も支持を受けていった。

 そうした支持は、ついにはひとつの頂点を迎えることとなる。
 細野晴臣プロデュースによるレコード化だ。
 細野晴臣率いるイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)が大ブームを巻き起こし、惜しまれつつも散開したのが1983年。その翌年、初のゲームミュージック・アルバム『VIDEO GAME MUSIC』が、細野晴臣の手により生み出されたのである。
 これには当時、ゲームのワクを超えた人気を誇っていた『ゼビウス』(ナムコ・1983年)が寄与していたと言われる。『ゼビウス』はゲームそのものの面白さもさることながら、ゲームのストーリーとして小説「ファードラウト」を書き上げるなど、コンピュータ・ゲームがコンピュータ・ゲームにとどまらないことを予感させる作品であった(いわば今日のメディアミックスの元祖とも言える)。そして、『ゼビウス』を手がけた遠藤雅伸は「新人類の旗手」とまで呼ばれ、テレビ番組に出演するなど注目される存在であった。
 そして、細野晴臣も『ゼビウス』に着目し、遠藤雅伸との交友が生まれる。この接点からナムコのゲームミュージックに興味を持ったであろう事は、想像に難くない。

 初のゲームミュージック・アルバム『VIDEO GAME MUSIC』は、驚きをもって迎えられた。
 1曲目の「XEVIOUS」、最終トラックの「GALAGA」こそ、細野の手によりゲームの音を使ったエディットがなされた。しかし、それ以外のタイトルは、ゲームの音がそのまま使われていたのだ。
 それは細野がゲームミュージックに何らかの可能性を感じていたからかもしれないし(かつてYMOでゲームの効果音に似せた音を使ったこともあった)、もしかしたらナムコのカスタム(独自開発)音源から鳴らされるハーモニーに、細野も魅せられたのかもしれない。
 いずれにせよ、いわば“細野のお墨付き”を得たことに、当時のゲームミュージック・マニアは歓喜した。
 ここに“ゲームミュージック”はひとつのジャンルとして芽生え、そしてこのアルバムが、更なるゲームミュージック・マニアを増やすことにもなったのだ。

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