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【5】コンピュージックの戦略

 1986年の設立から、ゲームミュージックにおいて一大勢力を誇ったGMOレーベル。
 しかし、他社がそのまま手をこまねいて見守っているはずもなく、新たな市場となった「ゲームミュージック」に、さまざまな形で参入を始めた。
 なかでも最も注目すべきなのが、アポロン音楽工業が立ち上げた「コンピュージック」。GMOレーベルとは対極をなす手法で、ゲームミュージック・マニアの熱い支持を集めていた伝説的レーベルだ。

 コンピュージックが採った手法は、「ゲーム1タイトルに絞り、そのサウンドトラックを低価格で発売する」というもの。GMO(というよりアルファレコード)が『VIDEO GAME MUSIC』から続けてきた、「アルバム一枚に何作ものゲームの曲を収録」という路線とは正反対のものだった。
 第1弾は1986年の5月21日に発売された、ファミコン版『グラディウス』のサントラ作品、『オリジナル・サウンド・オブ・グラディウス』。当時、ファミコンには移植不可能と言われた『グラディウス』を、少々強引ながらも移植した作品としてヒットを記録しており、それに関連した作品ということになるのだろう。メディアはカセットテープとCDシングル、価格は1000円だった(恐らくEP版は発売されていない)。ただ、当時はまだアーケード版『グラディウス』はレコード化されておらず(GMOの『コナミ・ゲーム・ミュージックVOL.1』のリリースはこの1ヶ月後)、加えてジャケットをよく見ないとファミコン版のサントラということがわかりづらいため、それに対する不満の声も聞かれたという。

 しかし、この後のコンピュージックは、恐るべき2タイトルをリリースする。それが『組曲 ドラゴンクエスト』『オリジナル・サウンド・オブ・沙羅曼蛇』だ。
 10月5日発売の『組曲 ドラゴンクエスト』は、同ゲームが週刊少年ジャンプで猛烈にプッシュされていたこともあり、大ヒットを記録。それにあわせて、当時の子供にあまり馴染みのなかった“すぎやまこういち”という作曲家の名前を、広く知らしめることとなった(当時はよく「学生街の喫茶店」の作曲者、という紹介をされていた)。その効果もあってか、このアルバム(こちらはあくまでフルアルバム)もヒットし、さらにその後の一連のドラクエシリーズを長くレコード化していくこととなる。
 また、12月6日発売の『オリジナル・サウンド・オブ・沙羅曼蛇』は、文字通りアーケード版『沙羅曼蛇』のサントラ作品。『グラディウス』の続編として大きな注目を浴びていた同作品は、専用コンパネ(テーブル型ゲームながら専用筐体まで発売していた)にステレオスピーカーを内蔵するなど、音楽面でもパワーアップをアピールしていた。そのサウンドが注目される最中、一番最初にサントラをリリースしたのが他のどこでもない、コンピュージックだったのである。まだ世に出て間もないゲームのサントラが出ること自体異例だったうえ、1000円という低価格もあって、こちらもゲーマーに大きな話題を呼んだ。
 ちなみに、雑誌「BeeP」のソノシートに『沙羅曼蛇』が収録されたのが1987年3月号(つまり1987年初頭発売分)、GMOレーベルがアルバム化したのが1987年3月25日発売の『コナミック・ゲーム・フリークス(いわゆるVOL.3)』と、完全に遅きに失している。

 こうして1986年終盤にリリースした作品は、1987年以降“ドラクエシリーズ”“グラディウスシリーズ”という、大きな二本柱としてコンピュージックを支えることとなる。
 “ドラクエシリーズ”は以降の続編のサントラに始まり、ピアノやエレクトーンでのアレンジ、コンサートのCD化、CDドラマなど多彩な角度から作品をリリースした。
 また“グラディウスシリーズ”は、コナミ作品の中でも『グラディウス』シリーズに特化し、名作として名高いMSX版『グラディウス2』のサントラを発売したほか、『グラディウスII~GOFERの野望~』のCD化もいち早く行っている。

 加えて、日本ファルコムをはじめとするパソコンゲームや、マイナーだが密かに注目されていたメーカー(テクノスジャパン、コアランドなど)の作品、さらにはアスキー関連のファミコン版『ウィザードリィ』や『オホーツクに消ゆ』などを、続々とサントラ化(あるいはアレンジアルバム化)していった。とりわけ、日本ファルコムでは『ザナドゥ』『ロマンシア』『ドラゴンスレイヤーIV』といった名曲群を取り上げており、初期の古代祐三作品をリリースしたことは、まさに慧眼である。

 ゲーム単独タイトルに集中し、また新たな鉱脈を次々と探し求めるその姿勢は、結果としてゲームミュージック界に偉大なる功績を残したと言えるだろう。
 そして、この「ゲーム単独タイトルのレコード化」という路線は、後に他のレーベルが追随し、また新たな時代を生み出すこととなるのだ。

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