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【8】三つ巴のナムコ争奪戦

 「【1】ゲームミュージックはナムコから始まった」でも触れたように、ナムコはゲームミュージックの始祖的存在であり、またいち早くその楽曲がレコード化された、まさしくパイオニア的存在である。
 しかし、初期三部作と呼ばれる『VIDEO GAME MUSIC』『SUPER XEVIOUS』『THE RETURN OF VIDEO GAME MUSIC』のリリース以後、いわゆるサントラにあたるアルバムがパタッと途絶えてしまう。
 1986年3月21日に、ビクター音楽産業(当時、以下ビクター)より『ビデオ・ゲーム・グラフィティ』というアルバムが発表されるものの、こちらはアレンジをメインとした企画アルバムであり、サントラとしての機能は極めて低い(『モトス』や『源平討魔伝』などの原曲のうち、わずかなフレーズが収録されているのみ)。このアルバム自体の評価は高いものの、いわゆるナムコゲームのサントラは85年6月25日以降、かなりの長期間にわたり発売されなかったのだ。

 その沈黙が破られたのが、2年後の87年。GMOレーベルより7月25日に『ナムコ・ゲーム・ミュージックVOL.1』が、8月25日に同『VOL.2』が、相次いで発売される。この2年間は、ちょうどナムコがカスタム音源からFM音源に移行した時期であり、収録された計10タイトルは、まさにその過渡期を物語る作品群と言える。『VOL.2』には、カスタム音源仕様の『スカイキッド』とFM音源仕様の『スカイキッドDX』を同時収録し、マニアに喜ばれた。
 しかし、その2ヵ月後の10月21日、ビクターより発売された『ビデオ・ゲーム・グラフィティVol.2』には、誰もが驚いた。前作のバラエティ路線を捨て、当時の話題作『ドラゴンスピリット』をはじめとする3作のオリジナルバージョンを収録した“サントラ作品”へと変貌を遂げたのだ。アレンジバージョンでは前作のバラエティ路線を意識したものも見られたが(『ワンダーモモ』のボーカルアレンジなど)、アレンジバージョンそのものが計3曲と大幅に縮小されており、以降このスタイル(新作ゲームのオリジナル+別ゲームのアレンジ数曲)がフォーマットとなる。

 こうなると、ナムコの今後のサントラ作品はどのレコード会社がアルバム化するのか、俄然注目されることとなった。『ビデオ・ゲーム・グラフィティ』が『Vol.2』を名乗ったことは、Vol.3以降もリリースされる可能性が大きいからだ。
 果たして翌88年12月16日には、ビクターより『ビデオ・ゲーム・グラフィティVol.3』がリリースされる。しかし、そのわずか5日後の12月21日には、サイトロンから『未来忍者 -G.S.M.NAMCO 1-』がリリース。かたやナムコの新基板“システムII”の第1弾作品『アサルト』を含むサントラ、かたやナムコが手がけた映像作品のサントラ+同名ゲームのサントラと、まさに正面からの一騎打ちのような状態だ。
 以降も、しばらくはビクターとサイトロンの共存体制が続くことになる。

 ◇ビデオ・ゲーム・グラフィティVol.4 (1989/3/8) 
 ●Winning Run -G.S.M.NAMCO 2- (1989/7/21)
 ◇ビデオ・ゲーム・グラフィティVol.5 (1989/8/21)
 ◇ワルキューレの伝説 (1989/9/21)
 ◇ビデオ・ゲーム・グラフィティVol.6 (1989/10/4)
 ●ダートフォックス (1989/11/21)
 ◇バーニングフォース (1990/2/7)
 ●マーベルランド (1990/5/21)
 ◇ファイネストアワー (1990/9/21)
 ●FINAL LAP 2 -G.S.M.NAMCO 3- (1990/9/21)

 ●印がサイトロン、◇印がビクターからのリリースを表す。
 ビクターはゲームに関してはナムコ作品に専念していたため、他に多数のメーカーを抱えていたサイトロンと比べると、リリースのペースは速い。しかし、都合二年間にわたり、2社がほぼ交互にCDを発売していたというのは興味深いところだろう。
 コナミが89年にはビデオやアルバムをキングレコードに一本化していたことを考えると、90年に入ってもこうした事態が続くのは異例とも言えた。

 しかし、最終的にはナムコ専任ということの強みが勝ったのか、アルバムとしては『FINAL LAP 2 -G.S.M.NAMCO 3-』を最後に、ナムコはサイトロンから離れることとなる。サイトロンからは、91年4月21日にビデオ『TVゲームの歴史 ナムコ編』がリリースされるものの、これは“TVゲームの歴史”シリーズの一作品と言え、カムバックと言うには及ばない。
 だが、以降もサイトロンとビクターは切磋琢磨を続け、その中でゲームミュージックのサントラに革命を起こすことになるのだが、それはまた別の機会に触れたい。

 ちなみに、タイトルにある“三つ巴”だが、じつはこの両陣営に割って入ったレーベルがある。何を隠そう、「コンピュージック」のアポロン音楽工業だ。
 とはいえ、コンピュージックからリリースされたナムコ作品は、下記の3点のみ。

 ★ドラゴンスピリット~エモーショナル・サウンド・オブ・ナムコット~ (1989/2/5
 ★
This is NAMCO! (1990/9/21)
 ★765MEGA-MIX (1991/7/21)

 『This is NAMCO!』は往時の『ビデオ・ゲーム・グラフィティ』を彷彿とさせるバラエティに富んだアレンジ集、『765MEGA-MIX』は文字通りのテクノ風リミックス作品、そしてドラゴンスピリットは、なんとPCエンジン版のサントラである。
 いずれも単発の企画物作品であり、残念ながらシリーズとして続くことはなく、サイトロンとビクターの2社を脅かすには至らなかった。

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