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【13】G.S.M.1500シリーズという「新兵器」

 サイトロンレーベルにおいては、ZUNTATAとS.S.T.BANDの活躍もあり、毎月発売するアルバムの材料には事欠かない状態が続いていた。
 …それどころか、この時期は基板性能の向上により日増しにゲームの規模が膨らみ続け、それに伴ってゲーム1作あたりの曲目もどんどん増加。それにより、次第にアルバムへの収録が追いつかない事態が起きていたのだ。
 具体的には、タイトーの場合『SYVALION -G.S.M.TAITO 3-/ZUNTATA』の収録タイトルは、わずかに2作品。『サイバリオン』と『チェイスH.Q.』だけで、CD1枚が埋まってしまったのだ。同じくセガの場合、『SUPER SONIC TEAM -G.S.M.SEGA 3-/S.S.T.BAND』においては、『ターボアウトラン』『ゴールデンアックス』を中心に何とか4タイトルを詰め込んだものの、収録時間は70分をオーバー。音楽CDの最大収録時間は約74分(当時)ということを考えると、まさに限界はすぐそこまで迫っていたのだ。

 その打開策としてふたつの方策が採られた。
 ひとつは、CD2枚組という手法。1枚にアレンジバージョン、もう1枚にオリジナルバージョンを集め、なんとか収録時間を増やすことに成功した。さらに、ケースの大きさを活かし解説書もやや厚めにすることで、アルバムとしての重みを増すことにも繋がったのだ。
 2枚組アルバムの最初の作品は、1989年11月21日発売のタイトー『DARIUS II -G.S.M.TAITO 4-/ZUNTATA』。後にセガ、カプコンも続いた。しかし、この作品ですら収録タイトルは『ダライアスII』と『ナイトストライカー』の2作品にとどまり、一方でアレンジのみを集めたディスクは収録時間が30分もなく、アンバランスさは否めなかった。ちなみに、アレンジのみを集めたディスクの記録面のうち、情報が記録されていない“余り”の部分に、ZUNTATAのロゴがプリントされている。

 そしてもうひとつの方策が、同年9月21日に発動されたサイトロンの新シリーズ、“G.S.M.1500シリーズ”。それまでGMOレーベル時代から受け継いできた「複数タイトルを1枚のアルバムに収録」する形ではなく、「単独タイトルを収録したCDを安価で発売」というパターンである。
 「単独タイトルを安価で」という方針は、かつてのアポロン音楽工業「コンピュージック」レーベルの手法を思い起こさせる。しかし、その時と異なる点は「12cmCDを使う」ということ。そのため、その気になればフルアルバム並みの長時間収録も可能で、なおかつ価格は1,500円という、まさに究極的サービスが実現したのだ。
 また、このシリーズには「アルバム単位では発売しにくいメーカーやゲームのサントラ化がしやすい」というメリットもある。これは1500シリーズ初期の発売タイトルを見れば、一目瞭然だろう。

【89年9月21日発売】
  『原始島』(SNK)、『天聖龍』(ジャレコ)、『ZERO WING』(東亜プラン)、
  『レジェンド・オブ・ヒーロー・トンマ』(アイレム)、『マルサの女』(カプコン)
【89年10月21日発売】
  『ドラゴンブリード』(アイレム)、『鮫!鮫!鮫!』(東亜プラン)、
  『ドンドコドン』(タイトー)
【89年11月21日発売】
  『テトリミックス』(セガ)、『クラックダウン・ゲイングランド』(セガ)、
  『ダートフォックス』(ナムコ)

 当時、中堅メーカーはリリースするゲームのタイトルの少なさ、また知名度の低さから、ある程度のタイトルが揃わないことにはアルバム化は困難な状況にあった。逆に、大手メーカーはリリースするゲームのタイトル数が多すぎて、アルバムに曲を収録しきれない作品が多数出てしまう。それが1500シリーズにより、中堅メーカーも大手メーカーも両方とも救われることとなる。
 また、『マルサの女』のように家庭用ゲーム機のサントラをリリースしたり(収録曲は全てアレンジされているが)、『クラックダウン・ゲイングランド』のように複数タイトルを1枚にまとめ、なおかつ1,500円で発売するといったようなケースもあった。ちなみに収録時間はそれぞれ20~30分程度で、2タイトルを網羅した『クラックダウン・ゲイングランド』でさえ、収録時間は33分に満たないのだ。
 数多くのメーカーを抱えるサイトロンによって、1500シリーズはまさに天啓であり新兵器。以降、このシリーズは小回りの良さを活かし、大いに活性化していくこととなる。

 ところが、じつはこれと全く同じ企画が、全く同じ日に、別のレコード会社にてスタートしていた。
 それはナムコ作品でお馴染みの、ビクター音楽産業(当時)。89年9月21日に、“ナムコ・ゲーム・サウンド・エキスプレス(以下NGSEに省略)シリーズとして、第1作目『ワルキューレの伝説』が発売されたのだ。
 このNGSEシリーズは、ゲーム1タイトルに絞り、12cmCDに収録、価格は1,500円…と、特徴は1500シリーズと寸分違わない。ただ、1500シリーズが毎月複数枚の作品をリリースしたのに対し、NGSEシリーズはリリース間隔が短くても3ヵ月に1枚、長いと半年以上経っても次のタイトルが発売されないこともあった。ビクターがゲームミュージックのサントラをナムコ一社のみに絞っていたことから、NGSEシリーズはアルバム『ビデオ・ゲーム・グラフィティ』シリーズの間を埋めるために生み出されたものと思われる。コンセプト上は、じつは1500シリーズとNGSEシリーズは正反対なのだ。

 いずれにせよ、この“価格破壊”とも言える両シリーズは、ゲームミュージック界を席巻することとなった。
 もともと、ゲーム単一タイトルでのアルバム制作というのは、珍しい話ではない。だが、それを当時のゲームミュージック界におけるメインストリームのサイトロンらが行い、かつ1,500円という低価格を打ち出したことが、まさしくエポックであった。
 この後、時代の潮流としては「アルバム1枚に複数ゲームの音楽を収録」というスタイルは廃れていき、CD1枚に単一タイトルのゲームミュージックという流れに傾いていくことになる。また、1500シリーズのおかげで晴れて表舞台に出られたメーカーもいくつか存在するが、それは別の機会に述べたい。

 なお、サイトロンとビクターの両陣営には、意外な部分で繋がりがある。
 そのひとつが、1990年3月21日にサイトロンから発売されたベストアルバム『GAME MUSIC BEST OF THE YEAR 1989』だ。
 この作品は、アーケードゲーム雑誌「ゲーメスト」で年に一度行われる「ゲーメスト大賞」、その1989年のVGM部門で上位に入賞した10タイトルの曲を、オムニバス形式で収録したアルバム。ここに、本来ならばビクターよりサントラが発売済みだったため収録が不可能と思われていた、ナムコの2作品『ワルキューレの伝説』『フェリオス』が収録されたのだ。同じく、キングレコードよりサントラが発売されていたコナミ作品が、結局収録されなかったことを考えると、このビクターの英断は賞賛に値する。
 一時期はナムコ作品を交互にリリースするなど(【8】三つ巴のナムコ争奪戦参照)、熾烈な争いを繰り広げてきた両陣営ではあるが、深い根底部分ではゲームミュージック界の発展のため、しっかりと手を取り合っていたのかもしれない。それを考えると、まったく同日に同じ企画(1500シリーズとNGSEシリーズ)がスタートするというのも、じつは示し合わせた結果だったのだろうか…興味は尽きない。

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